林 芙美子
多摩川
あまり暑いので、津田は洗面所へ顏を洗ひに行つた。洗面所には大きい窓があつたが、今日はどんよりして風ひとつない。むしむしした午後である。
「津田さん、お電話ですよ」
津田が呆んやり窓の外を眺めてゐると、女給仕が津田を呼びに來た。オフイスへ戻つて卓上の電話へ耳をあてると、
「津田さん? 津田さんでいらつしやいますか?」
林 芙美子
あまり暑いので、津田は洗面所へ顏を洗ひに行つた。洗面所には大きい窓があつたが、今日はどんよりして風ひとつない。むしむしした午後である。
「津田さん、お電話ですよ」
津田が呆んやり窓の外を眺めてゐると、女給仕が津田を呼びに來た。オフイスへ戻つて卓上の電話へ耳をあてると、
「津田さん? 津田さんでいらつしやいますか?」