林 芙美子

幸福の彼方

一

西陽の射してゐる洗濯屋の狭い二階で、絹子ははじめて信一に逢つた。

十二月にはいつてから、珍らしく火鉢もいらないやうな暖かい日であつた。信一は始終ハンカチで額を拭いてゐた。

絹子は時々そつと信一の表情を眺めてゐる。

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