林 芙美子
子供たち
雨が降つて暗い昼間であつた。堀には汚水がいつぱい溢れてゐた。床屋を出て雨傘を低く差しかけ、刈つて貰つた短い髪の毛にさはりながら歩いてゐると、後からぴちやぴちや汚水をはねて、「おばさん!」と言つて走つて来る子供があつた。
「何?」
振りかへると、赤と青の床屋のねじ棒が、眼に浸みるやうな色でぐるりぐるり床屋の店先きに廻つてゐる処から、汚れた紺飛白を着て、ゴム長をはいた小さい男の子が、にこにこ笑ひながら走つて来た。
「なアに?」
林 芙美子
雨が降つて暗い昼間であつた。堀には汚水がいつぱい溢れてゐた。床屋を出て雨傘を低く差しかけ、刈つて貰つた短い髪の毛にさはりながら歩いてゐると、後からぴちやぴちや汚水をはねて、「おばさん!」と言つて走つて来る子供があつた。
「何?」
振りかへると、赤と青の床屋のねじ棒が、眼に浸みるやうな色でぐるりぐるり床屋の店先きに廻つてゐる処から、汚れた紺飛白を着て、ゴム長をはいた小さい男の子が、にこにこ笑ひながら走つて来た。
「なアに?」