林 芙美子
亀さん
むっくり、むっくり、誰もとおらない田舍みちを、龜さんが荷物を首にくくりつけて旅をしていました。みちの兩側は廣い麥畑です。
麥畑の上をすずしい風がそよそよと吹いています。「ああ、くたびれた。どこへ行ったら水があるのかな。」龜さんは首を持ちあげて、じっとあたりをみました。
どこかで蛙の合唱がきこえます。何でも、このへんには蛙の小學校があるのでしょう。聲をはりあげて蛙がうたっています。龜さんは荷物をおろして、どっこいしょと石ころの上にはい上がってやすみました。
「おいおい、誰だ、重くてつぶれそうだよ。」