寺田 寅彦
窮理日記
十日 動物教室の窓の下を通ると今洗ったらしい色々の骸骨がばらばらに笊へ入れて干してある。秋の蠅が二、三羽止ってやや寒そうに羽根を動かしている。
十一日 垣にぶら下がっていた南瓜がいつの間にか垂れ落ちて水引の花へ尻をすえている。我等が祖先のニュートンはいかにエライ者であったかと云う事を考えると隣の車井戸の屋根でアホーと鴉が鳴いた。
十二日 傘を竪にさす。雨は横に降る。
十三日 豆腐屋が来た。声の波の形が整わぬので新米という事が分る。
寺田 寅彦
十日 動物教室の窓の下を通ると今洗ったらしい色々の骸骨がばらばらに笊へ入れて干してある。秋の蠅が二、三羽止ってやや寒そうに羽根を動かしている。
十一日 垣にぶら下がっていた南瓜がいつの間にか垂れ落ちて水引の花へ尻をすえている。我等が祖先のニュートンはいかにエライ者であったかと云う事を考えると隣の車井戸の屋根でアホーと鴉が鳴いた。
十二日 傘を竪にさす。雨は横に降る。
十三日 豆腐屋が来た。声の波の形が整わぬので新米という事が分る。