正岡 子規

花枕

上

神の工が削りなしけん千仞の絶壁、上平に草生ひ茂りて、三方は奇しき木の林に包まれ、東に向ひて開く一方、遙の下に群れたる人家、屈曲したる川の流を見るべし。此處に飛び來れるは、さゝやかに美しき神の子二人、何處よりか採りて來し種々の花を植ゑ試みつゝ、白き羽の一人は黄なる羽の一人に向ひ、

「匂よ。菫、苧環、櫻草、丁字草、五形、華鬘草の類は皆此方に栽ゑて枕元を飾るべし。

「それこそ善からめ。吾は此方に蒲公英、母子草、金鳳花、金仙花、福壽草など栽ゑんは色彩如何に。見よ、光よ。色彩美からずや。

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