細井 和喜蔵
モルモット
一
永いあいだの失業から生活難に追われて焦燥し、妻のヒステリーはひどくこうじて来た。彼女はちょっとした事にでも腹を立てて怒る、泣く、そしてしまいのはてには物をぶち投げて破壊するのであった。そうかと思うとまた、ありもしない自分の着物をびりびりっと引き裂いて了う。
彼はそんな風に荒んだ妻の心に、幾分のやわらか味を与えるであろうと思って、モルモットの仔を一つがい買って来た。牝の方は真っ白で眼が赤く、兎の仔のようである。そして牡の方は白と黒と茶褐色の三毛で眼が黒かった。
「おい、いいものを買って来たよ。」