大杉 栄
続獄中記
畜生恋
僕はいつも独房にばかりいて、雑房の方のことはよく知らない。雑房というのは、詳しく言えば雑居房だ。六人も八人も十人も、あるいはもっと多くの囚人が六畳敷か八畳敷かの一室にとじ籠められている。定員四名、現在十二名、というような札が、監房の入口にかけられてあるのも珍らしくはない。
多くは同じ性質の犯罪、たとえば泥棒は泥棒と、詐偽は詐偽と一緒に置かれて、数カ月乃至数カ年の間、仲よく泥棒や詐偽の研究をしている。実際みなずいぶん仲がいい。しかしその間にも、他のどこででもあるように、よく喧嘩がある。時としては殺傷沙汰にまでも及ぶ。が、その喧嘩のもとは、他の正直な人々の間のようには、欲得ではない。そのほとんどすべてが恋のいきさつだ。
ちょっと色の生っ白い男でもはいって来れば、みんなして盛んにちやほやする。まったくの新入りでも、監房や工場のいろんな細かい規則に、少しもまごつくことはない。なにかにつけて、うるさいほど丁寧に、よく教えてくれる。庇ってもくれる。みんなは、ただそれだけのことでも、どれほど嬉しいのか知れない。