森 鴎外

あそび

木村は官吏である。

ある日いつもの通りに、午前六時に目を醒ました。夏の初めである。もう外は明るくなっているが、女中が遠慮してこの間だけは雨戸を開けずに置く。蚊※(「巾+廚」、第4水準2-12-1)の外に小さく燃えているランプの光で、独寝の閨が寂しく見えている。

器械的に手が枕の側を探る。それは時計を捜すのである。逓信省で車掌に買って渡す時計だとかで、頗る大きいニッケル時計なのである。針はいつもの通り、きちんと六時を指している。

「おい。戸を開けんか。」

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