若山 牧水
樹木とその葉
貧しとし時にはなげく時としてその貧しさを忘れてもをる
ゆく水のとまらぬこころ持つといへどをりをり濁る貧しさゆゑに
小生の貧困時代は首尾を持つてゐない。だからいつからいつまでとそれを定める由もない。そんな状態であるために殆んどまたそれに對する感覺といふものをも失つて居る觀がある。從つてオイソレとその記憶を持ち出して來ることが困難である。止むなくこれを細君にたづね相談して見た。
流石に彼女にはあの時はあゝであつた、あそこでは斯うであつたといふ相當に生々しい感傷がある樣である。然しそれとても尋ねられたから思ひ出した程度のもので、要するに亭主同樣この永續的貧乏に對しては極めてノン氣であるらしい。