宮本 百合子

ロシアの旅より

一

九月十四日の夜モスク※(濁点付き片仮名「ワ」、1-7-82)ァを立ち今日(十六日)はヴォルガ河を下って居ります。モスク※(濁点付き片仮名「ワ」、1-7-82)ァを立つときはステーションが間違って本当に自分の汽車の出るステーションへついたらもう出るばかり、ほとんど飛び乗るようにしてやっとニージニーノブゴロドまで来ました。それからヴォルガの船です。この旅行は当りました。ロシヤへ来てから本当に楽に安心して旅をたのしむ始めての経験です。大体ヴォルガは夏下るのが普通で、もう時季は少しおそいのです。然し河岸の樹木は紅葉しているし、天気は珍らしくおだやかだし石炭の煙はないし、実によい。私は河を船で下るなど、これが始めてですから大満足です。ヴォルガの河でロシヤのぼう大さを感じます。このハガキはカザンから出します。

二

九月二十二日 土曜日

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