小林 多喜二

級長の願い

先生。

私は今日から休ませてもらいます。みんながイジめるし、馬鹿にするし、じゅ業料もおさめられないし、それに前から出すことにしてあった戦争のお金も出せないからです。先生も知っているように、私は誰よりもウンと勉強して偉くなりたいと思っていましたが、吉本さんや平賀さんまで、戦争のお金も出さないようなものはモウ友だちにはしてやらないと云うんです。――吉本さんや平賀さんまで遊んでくれなかったら、学校はじごくみたいなものです。

先生。私はどんなに戦争のお金を出したいと思ってるか分りません。しかし、私のうちにはお金は一銭も無いんです。お父さんはモウ六ヵ月も仕事がなくて、姉も妹もロクロクごはんがたべられなくて、だんだん首がほそくなって、泣いてばかりいます。私が学校から帰えって行くたびに、うちの中がガランガランとかわってゆくのです。それだのに、お父さんにお金のことなんか云えますか。でも、みんなが、み国のためだというのでこの前、ほんとうに思い切って、お父さんに話してみました。そしたら、お父さんはしばらく考えていましたが、とッてもこわい顔をして、み国のためッてどういう事だか、先生にきいてこいと云うんです。後で、男のお父さんが涙をポロポロこぼして、あしたからコジキをしなければ、モウ食って行けなくなった、それに私もつれて行くッて云うんです。

先生。

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