宮本 百合子

新女性のルポルタージュより

集った原稿をよんで、生活のルポルタージュというものは案外むずかしいものであることを深く感じました。

ごく主観的に自分の気持というものを自分の気持の内からだけ書いた感想のようなものが多いことも、現代の社会での若い婦人の生活について考えさせます。そういう文章は、なるほどこの人はこんな心持でいるということだけは分らせるけれど、ルポルタージュとして今日の社会に生きる一人の女性とその周囲とのいきさつを丸彫りに浮び上らせて来ないから、読んだ人がそこから自分と自分の周囲を考えるヒントを得て来ることも出来ないし、又、書いている人自身にしても、そのルポルタージュをかくことで自分の生活や気持を社会の関係のなかで見直したしかめてゆく助けにならせることも出来ないでしょう。

生活記録というものは、自分とその周囲との生活や心持なりを、只私はこう思うという点で表現するばかりでなく、私がこう思って生きているのはどういう訳と条件があるからなのだろうか、というところまで考えて見て、書かれなければならないものだと思います。

佳作三篇[#「佳作三篇」はゴシック体]

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