宮本 百合子
生活の道より
今年の一月から半年ばかりの間、私は大変非人間的条件の下で生活することを余儀なくされた。
今になって見ると、その不自由な生活の終りに近くなってからのことであるが、私は心臓が弱って氷嚢を胸に当てていないと、肺動脈の鬱血で咳が出て苦しい状態にあった。
そういう或る日、塵くさい木造建物の二階の窓際で髪を梳かし、少しさっぱりした心持になって不図わきを見ると、二三冊の本と一緒に「ローザの手紙」という茶色表紙の本が目に入った。
手にとって見ると、ローザ・ルクセンブルグがヨーロッパ大戦中三年四ヵ月の間監禁生活を強いられていた、その期間にカール・リープクネヒトの妻にあてて書いた手紙が集録されたものであった。