中里 介山
大菩薩峠
一
温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、夢でありました。
その翌日の晩、蛇滝の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。
机竜之助は、軒をめぐる雨滴の音を枕に聞いて、寂しいうちにうっとりとしていますと、頭上遥かに人のさわぐ声が起りました。
中里 介山
一
温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟、夢でありました。
その翌日の晩、蛇滝の参籠堂に、再びはかない夢を結びかけていた時に、今宵は昨夜とちがってしとしとと雨です。
机竜之助は、軒をめぐる雨滴の音を枕に聞いて、寂しいうちにうっとりとしていますと、頭上遥かに人のさわぐ声が起りました。