宮本 百合子
男女交際より家庭生活へ
先頃の『弘道』に掲載された「日本人の理想に吻合しない西洋人の家庭生活」と云う記事を読み、種々な感想の湧上るのを覚えました。
全篇の結論として、目下問題とされている家族制度、家庭生活改善の理想を徒に外国の風習などに摸倣せず、日本は日本民族独特の見地から、識見を以て発足すべきであると云う主旨には、恐らく何人も意義を挾む者はないでしょう。
あらゆる国々の習俗には、悉く美点と欠点とが並行しています。人間が、或る場合自己の天分によって却って身を過つことがあるように、一国にしても、或る時には、その是とすべき伝統的習俗によって、却って真実な人間的生活に破綻を生ぜしめることが多くあります。それ故、徒に新奇を競うて、外国人の営む生活の形骸を真似るのは、全く笑うべく悲しむべきことです。
併し、一国の文化、社会状態を観察した場合に、何時も、その裏面、消極的方面のみに注目するのは、果して妥当な態度でしょうか。