宮本 百合子

アワァビット

我々の、未だ完全に世界化されない生活感情では、兎角外国で起った事は、まるで異った遊星に生じた現象ででもあるかのような、間接さを以て、一般に迎えられる。理論は、既に、或る程度まで宇宙的になっているだろう。然し、真実、一人一人の日常の心が、何処まで汎人類的に活動しているか、時に疑わしく思う。地球上に在るおのおのの集団――国――が、現在どんな有機的関係を持っているか、又、どう云う運命の下に、日夜、同じ太陽を廻っているか。それ等を、わが胸で痛感する者は、決して未だ多過ぎることは無いのである。

近頃、漸々一体の注意を呼び始めた、ロシアの大飢饉と云うことに対しても、真の意味で、友誼的であるべき諸邦の愛が、私は、余り鈍っていると思う。

確に或る国は率先して華々しく救済の任務を負い始めた。けれども、その動機に鋭い直覚を持つ者は、切角の施物も、苦々しく味わうことは無いだろうか。

反対の或る一部は、まるで無感覚な状態に在る。ぼんやりと、耳を掠める風聞。――然し、兎も角、自分達の口腹の慾は満たされて行くのだし……必要なら、誰かがするだろう。――眼を逸し、物懶に居隅に踞っていようとするのである。

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