直木 三十五
貧乏一期、二期、三期
第一期
僕は、僕の母の胎内にゐるとき、お臍の穴から、僕の生れる家の中を、覗いてみて、
「こいつは、いけねえ」
と、思つた。頭の禿げかゝつた親爺と、それに相当した婆とが、薄暗くつて、小汚く、恐ろしく小さい家の中に、坐つてゐるのである。だが、神様から、こゝへ生れて出ろと、云はれたのだから、
直木 三十五
第一期
僕は、僕の母の胎内にゐるとき、お臍の穴から、僕の生れる家の中を、覗いてみて、
「こいつは、いけねえ」
と、思つた。頭の禿げかゝつた親爺と、それに相当した婆とが、薄暗くつて、小汚く、恐ろしく小さい家の中に、坐つてゐるのである。だが、神様から、こゝへ生れて出ろと、云はれたのだから、