宮本 百合子
幸福について
私たちが日頃、一番求めているのは、何かといえば、それは幸福であるとおもうのです。
あなた方は、みんなお若い方たちでいらっしゃるし、毎日生きていらっしゃる限り希望というものを、どこかに追求していらっしゃる。家庭で食べもののこまかいことをいう時もございましょうけれども究極するところは、やっぱり幸福に生きて、幸福に働いて、そして一生を終りたいというお気持だろうとおもいます。私などもそういう気持は非常に一貫してもっているのであります。
人間というものが、昔から、その幸福を求め、どんなにして生きて来たかということをおはなしして、それから今日私どもが幸福に生きるために、明日幸福に生きるために、どういうふうな問題がその前途にあるかということを、簡単におはなしして参りたいと思います。
御承知の通り、社会というものは、今のような形ではじまっておったのではありません。極く野蛮な時代が、ずいぶん永い間あったわけですが、そうした野蛮な時代から、人間は、幸福について、考えていたのであります。只それが幸福という言葉によって、はっきり考えられてはいなかったのです。どういうふうにして生きていたかというと、出来るだけ便利な、出来るだけよく生きたいという、言葉にならないような希望から、人間は沢山の発明をし、そうして、だんだん社会が発達して来たのであります。