宮本 百合子
新しい躾
この半年ばかりのうちに、私たちの生活におこった変化は、日本のこれまでのいつの歴史にもその例がないほど、激しいものです。日本は今、非常な困難とたたかいながら、一日も早く民主の国となり、平和の保証された国となり、世界に再び独立国として登場するための努力をはじめております。
これからの私たち日本人は、世界に恥しくない市民として、どういう風でなければならないでしょうか。新しい躾の問題も、こういう広い、雄大な立場から考えられなければならないであろうと思います。
躾という字をみますと、美しく身をもつ、ことと思えます。美しく身を持した生活態度というのは、どういうことをさしていうのでしょう。
昔から躾というと、とかく行儀作法、折りかがみのキチンとしたことを、躾がよいといいならわして来ました。しかし、今日の生活は遑しく、変化が激しく、混んだ電車一つに乗るにしても、実際には昔風の躾とちがった事情がおこって来ています。しとやかに、男の人のうしろについて、つつましく乗物にのるのが、昔の若い女性の躾でした。