宮本 百合子

獄中への手紙

一月八日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

一月八日  第二十六信

晴れ。五十一度。緑郎のピアノの音頻り。

今年の正月は去年とくらべて大変寒さがゆるんで居りますね。そちらいかがですか。お体の工合はずっと順調ですか。畳の上で体が休まるということを伺って、きわめて具体的にいろいろ理解いたしました。何でも、世界を珍しい暖流が一廻りしたそうで、大変あったかい。それで却って健康にわるく、世界に一種の悪質の風邪が流行している由、称して、ヒットラー風。

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