宮本 百合子

獄中への手紙

一月一日 〔豊島区西巣鴨一ノ三二七七巣鴨拘置所の宮本顕治宛 四谷区西信濃町慶応義塾大学病院内い号の下より(封書)〕

一月一日  第一信。

あけましてお目出とう。今年もまたいい一年を暮しましょうね。

ずっと順調で熱もきのうきょうは朝五・九分位、夜六・八どまりの有様です。このようになおりかかって来ると傷口の大小が決定的に影響して、一寸足らずの傷であるありがた味がよくわかります。傷そのものの不便さはもう殆ど感じません。ただ腹帯をたっぷりかたくまいているのでおなかがかたくって、曲りかがみに大不便です。上体を一寸捩るような形はまだ妙に筋がつれて出来ませんがベッドから下りたり上ったりすっかり自分の力でやれます。きょうから少々歩き初めです。一日に三四度往復十間位のところを歩くようになりました。これで三四日して入浴出来るようになって、もっと足がしっかりしたら全快ですね。傷が大きいと、表面だけ癒ったようで内部はよくついていないことがあり、退院後に又深いところで苦情が生じたりする危険があるそうですがこう小さい傷だと、内からちゃんとまとまり易いから大助り。

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