宮本 百合子

獄中への手紙

一月三日 〔豊島区西巣鴨一ノ三二七七巣鴨拘置所の宮本顕治宛 本郷区林町二十一より(代筆 牧野虎雄筆「春の富士」の絵はがき)〕

明けましておめでとう。そちらはいかがな正月でしょう。こちらは兎も角ヤス子が命拾いをしたので、どうやらお芽出度い春らしい三※[#濁点付き小書き片仮名カ、7-4]日です。国男さんが風邪をひき、その上目を悪くしてお雑煮を食べられません。太郎は十になったから頭を丸い三分刈りにしたら面ざしが変る位男の子らしくなりました。私は今年は完全にね正月、一日のうち起ているのはお雑煮を祝う前後の数時間で、夜とひる前は床の内です。ヤス子騒ぎの一段落後は私もやっと安心して、人間並の疲れかたになり、即チ何をするのもいやと云う風になりました。ポーッとしてねどこばかり恋しがっていますからどうぞ御安心下さい。今迄はこんな気のゆるんだくたびれかたの出来ない程度にしか、神経もよくなっていなかったものと見えます。タカちゃんからお菓子を造らして送ってくれました。徳山の菓子やでしょう。今日はテッちゃんが見えました。みんなからよろしく。

一月七日 〔巣鴨拘置所の宮本顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

一月七日

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