宮本 百合子
獄中への手紙
一月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
一九四五年一月二日
明けましておめでとう。爆竹入りの越年でしたが、余り近い所へ落ちもせず、しずかな元日でした。その上昨晩は思いのほか通して眠れたのでけさは特別よい二日です。寿江子が帰って来ていて、大晦日は、わたしが床に入ってしまってからブーの間にすっかりテーブルに白布をかけ、飾り、お正月にしてくれました。三十一日によそから届いたリンゴもあり。いまは、おそい御雑煮をたべて、炬燵のところに小机をもちこみ、足先を温くしてこれを書いて居ります。書いている紙の右端に風にゆれる陽かげがおどって居ります。
この春はよき春なりとのらすれば妻も勇みて若水を汲む