楠山 正雄
春山秋山
一
むかし、但馬国におまつられになっている出石の大神のお女に、出石少女という大そう美しい女神がお生まれになりました。この少女をいろいろな神様がお嫁にもらおうと思って争いました。けれども少女はお嫁に行くことをいやがって、だれのいうことも聴こうとはなさいませんでした。
この神さまたちの中に、秋山の下氷男と春山の霞男という兄弟の神さまがありました。ある日兄の秋山の下氷男は、弟の霞男に向かって、
「わたしはあの少女をお嫁にもらいたいと思っていろいろに骨を折ってみたが、どうしてもいうことを聴いてくれない。どうだ、お前ならもらえると思うか。」