楠山 正雄
人馬
一
むかし、三人の坊さんが、日本の国中を方々修行して歩いていました。四国の島へ渡って、海ばたの村を托鉢して歩いているうちに、ある日いつどこで道を間違えたか、山の中へ迷い込んでしまいました。行けば行くほどだんだん深い深い山道に迷い込んで、どうしてももとの海ばたへ出ることができません。そのうちにだんだん日が暮れてきて、足もとが暗くなりました。気をあせればあせるほどよけい道が分からなくなって、とうとう人の足跡のない深い山奥の谷の中に入り込んでしまいました。もう道のない草の中をやたらに踏み分けて行きますと、ひょっこり平らな土地へ出ました。よく見ると、人の家の垣根らしいものがあって、中には人が住んでいるようですから、坊さんたちは地獄で仏さまに会ったようによろこんで、ずんずん中へ入ってみますと、なるほど一軒そこに家がありました。
でもよく考えてみると、こんな人の匂いもしそうもない深い山奥にだれか住んでいるというのがふしぎなことですから、きっと人間ではない、鬼が化けたのか、それともきつねかたぬきかが化かすのではないかと思って、少し気味が悪くなりました。けれど何しろくたびれきって一足も歩けない上に、おなかがすききっているものですから、もう鬼でも化け物でもかまわない、とにかく休ませてもらおうと思って、その家の戸をとんとんたたきました。
すると中から「だれだ。」といって、六十ばかりのおじいさんの坊さんが出て来ました。何だかこわらしい、食いつきそうな顔をした坊さんでしたけれど、今更どうにもならないと思って、三人は上へ上がりました。するとあるじの坊さんは、