海野 十三

戦時旅行鞄

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大上海の地下を二百メートル下った地底に、宇宙線をさけて生活している例の変り者の大科学者金博士のことは、かねて読者もお聞き及びであろう。

かの博士が、今日までに発明した超新兵器のかずかずは、文字どおり枚挙に遑あらず、読者の知って居られるものだけでも十や二十はあるであろう。その超新兵器は、発明されて世の中に出る毎に、何かしら恐ろしき騒ぎをひきおこし、気の弱い連中を毎回気絶させている次第であった。

中でも、かの依存梟雄の醤買石委員長は、同じ民族人なる金博士の発明兵器による被害甚大で、そのためにこれまで幾度生命を落しかけたか知れず、醤の金博士を恨むことは、居谷岩子女史[#「居谷岩子女史」はママ]が伊右衛門どのを恨む比などに非ず、可愛さあまって憎さが十の十幾倍という次第であった。

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