海野 十三
もくねじ
倉庫
ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。
そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。
ぼくをちょいと見た者は、どこを押せばそんな嘆きの音が出るのかと怪しむだろう。身体はぴかぴか黄金色に光って、たいへんうつくしい。小さい子供なら、ぼくを金だと思うだろう。ぼくをよく知っている工場の人たちなら、それがたいへん質のいい真鍮であることを一目でいいあてる。実際ぼくの身体はぴかぴか光ってうつくしいのである。