海野 十三

崩れる鬼影

月光下の箱根山

それは大変月のいい夜のことでした。

七月の声は聞いても、此所は山深い箱根のことです。夜に入ると鎗の穂先のように冷い風が、どこからともなく流れてきます。

「兄さん。今夜のようだと、夏みたいな気がしないですネ」

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