宮本 百合子
現実の必要
選挙が迫って来ている。人の気質によっては、こういうことに大して心をひかれないたちのものもある。そういう人は、これまで余り選挙などに熱中しないで、時には棄権もして来たかもしれない。信用出来もしない候補者に投票なんかしたくないと思って、良心的に棄権した場合もあったかもしれない。
しかし、四月十日にきめられている今度の選挙は、私たちに、どんな心もちを抱かせているだろうか。少くとも、これについて無関心ではいられないものが、私たちの生活全体の事情から湧き上って来ている。
理不尽な戦争を遂行させられて、日本の人民生活は、根本から破壊されている。しかも、幣原内閣は、それに対して決して皆の納得ゆくような方針を実現してはいない。にもかかわらず、現内閣は、よたつきながら、今倒れるか、今倒れるかと思われながら、とうとうモラトリアム公表という重大な危機さえ突破して、どういう工合に作成されたものか、一昨日(三月七日)には憲法改正草案を発表するところまでもち越して来ている。
私たち七千万の人民は、自分たちの毎日の現実のひどい有様と、この無責任で親切気のない政府の不思議な居据り状態とを見較べて、しんから、このままで生活はどうなって行くのだろうかと思いはじめている。