海野 十三・丘 丘十郎
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
或る靄のふかい朝――
僕はカメラを頸にかけて、幅のひろい高橋のたもとに立っていた。
朝靄のなかに、見上げるような高橋が、女の胸のようなゆるやかな曲線を描いて、眼界を区切っていた。組たてられた鉄橋のビームは、じっとりと水滴に濡れていた。橋を越えた彼方には、同じ形をした倉庫の灰色の壁が無言のまま向きあっていたが、途中から靄のなかに融けこんで、いつものようにその遠い端までは見えない。
気象台の予報はうまくあたった。暁方にはかなり濃い靄がたちこめましょう――と、アナウンサーはいったが、そのとおりだ。