幸田 露伴
雪たたき
上
鳥が其巣を焚かれ、獣が其窟をくつがえされた時は何様なる。
悲しい声も能くは立てず、うつろな眼は意味無く動くまでで、鳥は篠むらや草むらに首を突込み、ただ暁の天を切ない心に待焦るるであろう。獣は所謂駭き心になって急に奔ったり、懼れの目を張って疑いの足取り遅くのそのそと歩いたりしながら、何ぞの場合には咬みつこうか、はたきつけようかと、恐ろしい緊張を顎骨や爪の根に漲らせることを忘れぬであろう。
応仁、文明、長享、延徳を歴て、今は明応の二年十二月の初である。此頃は上は大将軍や管領から、下は庶民に至るまで、哀れな鳥や獣となったものが何程有ったことだったろう。