南部 修太郎

画家とセリセリス

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それが癖のいつものふとした出來心で、銀座の散歩の道すがら、畫家の夫はペルシア更紗の壁掛を買つて來た。が、家の門をはひらない前に、彼はからつぽになつた財布の中と妻の視線を思ひ浮べながら、その出來心を少し後悔しかけてゐた。始終支拂ひに足らず勝ちな月末までにもう十日とない或る秋の日の夕方だつた。

「あら、またこんな物を買つてらしたの?」

さすがに隱しきれもせずに、夫がてれ臭い顏附でその壁掛の包みを解くと、案の條妻は非難の眼を向けながらさう言つた。

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