戸坂 潤

現代唯物論講話

序

現代唯物論の対象となるものを物質論・認識論・科学論・文化論・の四部門に分けて見た。存在が物質であり、之を認識するのが認識であり、その認識が科学に組織されるのであり、そして科学は文化に包括される、と考えたからである。夫々の部門に適当な論文を配置して統一を与えた。

各部門がこれ等の論文で要を尽しているなどとは到底思われない。寧ろ当然載るべき個処の論文が載っていない場合の方が多い。云わば之は、私の原子番号の内で今後の発見をまつ処のものである。論文は学究的乃至解説的なものを主とする。数年前のものもあるが加筆して編集した。

「空間論」は昔から多少纏めて見たいと思っていたので、之までどの論文集にも再録しなかったけれども、今の処ではいつ眼鼻がつくとも判らないので、ここに加えることにした。之は私を唯物論へ導く働きをしたものの一つで、思い出のあるものだが、空間問題は数年来理論的材料が増加しているので、私の論文が数年分後れた考察となったのは已むを得ない。いつか機を見て物にしたいと思っている題材である。――なおこの書物に現われた内容上形式上の甚だしい不備の点は、いつか恢復しなければならぬと考えている。

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