泉 鏡花

海の使者

上

何心なく、背戸の小橋を、向こうの蘆へ渡りかけて、思わず足を留めた。

不図、鳥の鳴音がする。……いかにも優しい、しおらしい声で、きりきり、きりりりり。

その声が、直ぐ耳近に聞こえたが、つい目前の樹の枝や、茄子畑の垣根にした藤豆の葉蔭ではなく、歩行く足許の低い処。

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