泉 鏡花
凱旋祭
一
紫の幕、紅の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、唯うつくしきものの弥が上に重なり合ひ、打混じて、譬へば大なる幻燈の花輪車の輪を造りて、烈しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか緒として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。
紀元千八百九十五年―月―日の凱旋祭は、小生が覚えたる観世物の中に最も偉なるものに候ひき。
知事の君をはじめとして、県下に有数なる顕官、文官武官の数を尽し、有志の紳商、在野の紳士など、尽く銀山閣といふ倶楽部組織の館に会して、凡そ半月あまり趣向を凝されたるものに候よし。