宮本 百合子

沁々した愛情と感謝と

「禰宜様宮田」が、いつか単行本になる時があったら、是非云い添えたいと思っていたことを書きます。

あれは、そんなに大して大きなものでもなかったのに、非常に沢山の欠点を持っています。其等の欠点に対しての自分は、真個に何処までも謙譲ではありますけれども、此頃になって、あの作は私の一生の生活を通してかなり大切なものになって来ました。そして、その大切なものとなった原因は、自分にとってあの作を、彼程満足出来ないものとした全く同様な「其等の欠点」なのです。

コンポジションの上の不完全さはともかくも、あの作にはそれ以前のどれにもなかったに違いない、またよしあったにしろあんなに明かではなかった思想上の、多くの矛盾や、躊躇や、不徹底さのあるのは確かです。なんだかしんがムズムズしているようです。

全体に漲っているその動揺が、あれから半年経った今の私にとって、ああ大事だったと思わせるようになって来たのです。

青空文庫の作品カード