芥川 竜之介
野人生計事
一 清閑
「乱山堆裡結茅蘆 已共紅塵跡漸疎
莫問野人生計事 窓前流水枕前書」
とは少時漢詩なるものを作らせられた時度たびお手本の役をつとめた李九齢の七絶である。今は子供心に感心したほど、名詩とも何とも思つてゐない。乱山堆裡に茅蘆を結んでゐても、恩給証書に貯金の通帳位は持つてゐたのだらうと思つてゐる。
芥川 竜之介
一 清閑
「乱山堆裡結茅蘆 已共紅塵跡漸疎
莫問野人生計事 窓前流水枕前書」
とは少時漢詩なるものを作らせられた時度たびお手本の役をつとめた李九齢の七絶である。今は子供心に感心したほど、名詩とも何とも思つてゐない。乱山堆裡に茅蘆を結んでゐても、恩給証書に貯金の通帳位は持つてゐたのだらうと思つてゐる。