芥川 竜之介

案頭の書

一 古今実物語

一

大阪の画工北※(「王+睿」、第3水準1-88-34)の著はせる古今実物語と云ふ書あり。前後四巻、作者の筆に成れる※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)画を交ふ。格別稀覯書にはあらざれども、聊か風変りの趣あれば、そのあらましを紹介すべし。

古今実物語は奇談二十一篇を収む。その又奇談は怪談めきたれども、実は少しも怪談ならず。たとへば「幽霊二月堂の牛王をおそるる事」を見よ。

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