芥川 竜之介
わが俳諧修業
小学校時代。――尋常四年の時に始めて十七字を並べて見る。「落葉焚いて葉守りの神を見し夜かな」。鏡花の小説など読みゐたれば、その羅曼主義を学びたるなるべし。
中学時代。――「獺祭書屋俳話」や「子規随筆」などは読みたれど、句作は殆どしたることなし。
高等学校時代。――同級に久米正雄あり。三汀と号し、朱鞘派の俳人なり。三汀及びその仲間の仕事は詩に於ける北原白秋氏の如く、俳諧にアムプレシヨニスムの手法を用ひしものなれば、面白がりて読みしものなり。この時代にも句作は殆どせず。
大学時代。――略ぼ前時代と同様なり。