宮本 百合子

雲母片

わかい、気のやさしい春は

庭園に美しい着物を着せ

      ――明るい時――

林町の家の、古風な縁側にぱっと麗らかな春の白い光が漲り、部屋の障子は開け放たれている。室内の高い長押にちらちらする日影。時計の眩ゆい振子の金色。縁側に背を向け、小さな御飯台に片肱をかけ、頭をまげ、私は一心に墨を磨った。

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