宮本 百合子
三鞭酒
土曜・日曜でないので、食堂は寧ろがらあきであった。我々のところから斜彼方に、一組英国人の家族が静に食事している。あと二三組隅々に散らばって見えるぎりだ。涼しい夏の夜を白服の給仕が、食器棚の鏡にメロンが映っている前に、閑散そうに佇んでいる。
「――寂しいわね、ホテルも、これでは」
「――第一、これが」
友達は、自分の前にある皿を眼で示した。
宮本 百合子
土曜・日曜でないので、食堂は寧ろがらあきであった。我々のところから斜彼方に、一組英国人の家族が静に食事している。あと二三組隅々に散らばって見えるぎりだ。涼しい夏の夜を白服の給仕が、食器棚の鏡にメロンが映っている前に、閑散そうに佇んでいる。
「――寂しいわね、ホテルも、これでは」
「――第一、これが」
友達は、自分の前にある皿を眼で示した。