宮本 百合子
鼠と鳩麦
友達と火鉢に向いあって手をかざしていたら、その友達がふっと気づいたように、
「ああ、一寸、これ御覧なさい。こういうものがあなたの爪にあって?」
左の中指の爪のところをさすのを覗きこんで見ると、そこには薄赤い爪の中ごろに、すこし輪廓のぼやけた白い小花のような星が一つ出ているのであった。私はふーんと感心して、自分の十の指先を揃えて眺め直した。
「私にはないわ、そんなもの」
宮本 百合子
友達と火鉢に向いあって手をかざしていたら、その友達がふっと気づいたように、
「ああ、一寸、これ御覧なさい。こういうものがあなたの爪にあって?」
左の中指の爪のところをさすのを覗きこんで見ると、そこには薄赤い爪の中ごろに、すこし輪廓のぼやけた白い小花のような星が一つ出ているのであった。私はふーんと感心して、自分の十の指先を揃えて眺め直した。
「私にはないわ、そんなもの」