宮本 百合子
兄と弟
魯迅伝から
小田嶽夫氏の「魯迅伝」を少しずつ読んでいる。いろいろと面白い。兄である魯迅と弟である周作人との間にある悲劇は、決して一朝一夕のものではないことを感じた。
魯迅は十三の年、可愛がってくれていた祖父が獄舎につながれるようなことになってから極度に落魄して、弟作人と一緒に母方の伯父の家にあずけられた。魯迅は「そこの家の虐遇に堪えかねて間もなく作人をそこに残して自分だけ杭州の生家へ帰った」そして、病父のためにえらい辛酸を経験した。
作人はその間に、魯迅と一緒にあずけられた家から祖父の妾の家へ移って、勉学のかたわら獄舎の祖父の面会に行ったり、「親戚の少女と淡い、だが終生忘られない初恋を楽しんだりしていた。」