宮本 百合子
道灌山
小さい二人の男の子と、それよりもすこし大きい女の子とが、ぴったりはりついて目の下にひろがる田端駅の構内をあきず眺めている柵のところは、草のしげったほそい道になっていた。
その細い道は、うねうねとつづいてずっと先まで行っているが、人のとおる道と、すぐそこからはじまっている道灌山との境は誰にもわからなかった。道は、道灌山そのものの崖ぷちにそって通っており、三人の子供がきまってそこへゆく柵のところも、実はもう道灌山のはずれそのものだったのかもしれない。
二人の男の子と一人の女の子とが田端の汽車を見に、エナメル塗りのトランク型弁当箱をもって、誰だったか大人の女のひとにつれられて柵のところへ行った時代と、やっぱり大人の女と一緒ではあったが道灌山のなかで鬼ごっこなどした時代とは、同じでなかった。
汽車が見たい時代に、私たち子供にとってもう一つ実に素晴らしい見ものがあった。それは牧田の牛だった。