宮本 百合子
今年こそは
今年はいろいろな意味で非常に重大な年だと思います。それで個人の抱負と云う様な小さいものでなく、大きく日本人全体としての心構えとでも申しましょうか、それでよろしいでしょうね……
私達の生きている二十世紀も今年で丁度一九五〇年、真中の一つのけじめにかかりました。去年はアジアにとってきわめて意味深い大きな出来ごとがあって、遂に中国は新しい中華人民共和国として誕生しました。
支那と云えば明治の始めから私達日本の人民は何時もなんとなしにおとった人民の様に思いこまされて居って、日清、日露そして第二次世界大戦に於ての中国全土にわたる日本軍の侵リャクを大して人道的に罪だとも思わせられない様になっていました。
しかし中国の人々は日本軍から受けた惨ギャクと永年の搾取に対して、決して忘れてはいないと思います。丁度吉田内閣で首切られた全逓のどんな組合員でも、自分がどういう政府によって生活を奪われたかと云う事、そしてそれに対する抗議さえも奪われたと云う事に対して忘れる人がない様に……