中里 介山
大菩薩峠
一
白根入りをした宇津木兵馬は例の奈良田の湯本まで来て、そこへ泊ってその翌日、奈良王の宮の址と言われる辻で物凄い物を見ました。兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首が二つ、竹の台に載せられてあったから驚かないわけにはゆきません。捨札も無く、竹を組んだ三脚の上へ無雑作に置捨てられてあるが、百姓や樵夫の首ではなくて、ともかくも武士の首でありました。
「これは何者の首で、いかなる罪があって斯様なことになったものでござるな」
通りかかった人に尋ねると、
中里 介山
一
白根入りをした宇津木兵馬は例の奈良田の湯本まで来て、そこへ泊ってその翌日、奈良王の宮の址と言われる辻で物凄い物を見ました。兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首が二つ、竹の台に載せられてあったから驚かないわけにはゆきません。捨札も無く、竹を組んだ三脚の上へ無雑作に置捨てられてあるが、百姓や樵夫の首ではなくて、ともかくも武士の首でありました。
「これは何者の首で、いかなる罪があって斯様なことになったものでござるな」
通りかかった人に尋ねると、