伊藤 野枝

成長が生んだ私の恋愛破綻

自分の信ずる事の出来る唯一のものは、やはり自分自身より他にはありません。自分以外の本当に唯一な人と思う人さえ本当にはいっしょに融け合う事はむずかしいのです。

自分の本当の心持――それもなかなか他人には充分に話せるものではありません。どれほど上手に話しても、どれほど多くの言葉を費しても、話すほど損をしたような気持になる事があります。

私の過去の生活――私はそれを他人に話そうとは思いません。私は過去のある時代に、かなりよく自分の生活を人に話しました。それも本当に理解のある親しいと信じた人に。けれども、私が大事な場合に立ったときに、私の話した事だけは理解もし、信じもしてくれましたが、私が話せないそして切ない事にはちっとも真実にふれてはくれませんでした。そして私が話さない事から理解はやぶれてアベコベに反感に代りました。私は他人の理解というもののアテにならぬ事をつくづくさとりました。

その友達は、私に話す事を求めました。しかしそのときには彼女はもう私にかなりな反感を持っていました。他人から注がれた心持に動かされていました。理解の勝れた友達は、私が委細の心持や事情を書けば理解をしてくれる事は私も信じてはいましたが、しかし私はもう話す勇気はありませんでした。そしてそのとき以来、私は自分の事を他人に話すのは止めにしようと思いました。

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