幸田 露伴

貧乏

その一

「アア詰らねえ、こう何もかもぐりはまになった日にゃあ、おれほどのものでもどうもならねえッ。いめえましい、酒でも喫ってやれか。オイ、おとま、一升ばかり取って来な。コウ※(小書き片仮名ト、1-6-81)、もう煮奴も悪くねえ時候だ、刷毛ついでに豆腐でもたんと買え、田圃の朝というつもりで堪忍をしておいてやらあ。ナンデエ、そんな面あすることはねえ、女ッ振が下がらあな。

「おふざけでないよ、寝ているかとおもえば眼が覚めていて、出しぬけに床ん中からお酒を買えたあ何の事たえ。そして何時だと思っておいでだ、もう九時だよ、日があたってるのに寝ているものがあるもんかね。チョッ不景気な、病人くさいよ、眼がさめたら飛び起きるがいいわさ。ヨウ、起きておしまいてえば。

「厭あだあ、母ちゃん、お眼覚が無いじゃあ坊は厭あだあ。アハハハハ。

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