ゴーゴリ ニコライ

死せる魂

第七章

だらだらと退屈な長の道中のあいだ、寒さや、雪融や、泥濘や、寝ぼけ眼の宿場役人や、うるさい鈴の音や、馬車の修理や、啀みあいや、さては馭者だの、鍛冶屋だの、その他いろんな街道筋の破落戸どものためにさんざん悩まされた挙句、やっとのことで旅人の眼に、自分を出迎えにこちらへ近寄って来るような、懐かしい我が家の灯影がうつりだす――と、やがて彼の目前には見馴れた部屋々々が現われ、迎えに駈け出した人々の歓声がどっとあがり、子供たちがわいわい騒いで駈けまわる、次いで心もなごむような落着いた話に移るのであるが、それが又、旅の憂さをすっかり忘れさせるような熱い接吻でとぎれ勝ちになる――といった具合だったら、まったく申し分はない。そういう隠処のある世帯持は幸福だが、情けないのは独身者で!

また作家にしても、あの惨めな現状で人に眼を蔽わしめるような、甚だ面白くない、退屈きわまる人物などはそっちのけにして、もっと卓越した人柄の持主を題材とし、日毎に移りゆく世相の大いなる淵瀬から、ただ少数の例外だけを選り出して、己が竪琴の高雅な調子を一度として変えたこともなければ、自分の立っている高所から、取るにも足らぬ哀れな文士仲間と同じレベルなどへは決して降ることもなく、地上のことなどには一切かまわず、常に世俗から遠く掛けはなれた、いとも高尚な物象に一心を打ちこむことの出来る人は幸福である。彼はそういうものの間で、さながら自分の家族にでも取りかこまれたように、恣に振舞っているが、その間にも彼の名声は遠く高く轟きわたるのだから、いよいよ以ってその素晴らしい運命が二重に羨ましい次第である。彼は身も心もとろけるような

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